日本にはよくわからない迷信がたくさんある。例えば「しゃっくりが100回でると死ぬ」「写真を撮られると魂が抜かれる」などの迷信である。
なぜ、このような摩訶不思議な言い伝えが広まったのだろうか?現代に伝わる口コミ戦略は古来から続くものだった。
時代を超えても褪せない最強の口コミ術
例えば、「夜、爪を切ると親の死に目に会えない」という言い伝えのルーツがある。
江戸時代、今のようにコンパクトで精度のよい爪切りは存在していなかった。そのため、薄暗い行灯の下、大きなハサミで爪を切ることになる。どんなに細心の注意を払ったところで、どうしても深爪にならざるをえなかった。
江戸時代の日本人は、80%が農民である。農作業中、深爪から毒がまわったり、細菌で指が腐ったりした人もいただろう。
再三に亘る「夜、爪を切ってはいけない」という警告も虚しく、なかなか改善には至らなかったに違いない。 明るいうちに爪を切りたいのは山々だが、利便性のよくなかった時代では、今より遥かにやることが山積みで、時間が取れなかったのだ。
そこで、お坊さんがとんちを効かせ、「夜、爪を切ると親の死に目に会えない」というソーシャルコピーを発明し、世に広めたのである。 それが何百年と語り継がれ、いまも変わらずみんなが知る言い伝えとなっている。
荒れる成人式、キレる17歳
ヘブンズパスポートは、こうした口コミ術を応用することで成功した。キレる17歳という言葉が大流行した1999年、「ひとつ善いことをしたらひとつシールを貼っていく」というパスポート型の手帳を売り出したものだ。
お百度参りの手法を取り入れ「100回善いことをすると願いが叶う」という触れ込みが女子高生の間でたちまち話題になった。メディアに取り上げられ、販売から1年半後には15万部の爆発的ヒットを記録した。
言い伝えの本質である「言葉を上手に活かすこと」を自分たちの商品やノウハウに応用し、世の中を大きく変えることができる。たった一行のキーワードが、世界を変えることだってあるのだ。
「本質を伝え収益をあげる」2500年前から続く仏教システム
現代のようにTVやラジオ、もちろん広告代理店もなかった時代では、より早く伝達していくために、言葉を巧みに組み合わせることが必要不可欠だった。広告や宣伝、プロモーションには、人から人へと伝染する方法しかなかったのだ。
本質的なキャッチコピーをつくり収益をあげる仏教的広告モデルは、2500年も前から存在し、口コミという信頼の獲得へと発展し、現代でも重要な役割を担っている。
この記事を書いた人
DEEP Branding japan 編集長
オキタ・リュウイチ
DEEP Branding japan 編集長
オキタ・リュウイチ
早稲田大学人間科学科中退。行動経済学に類した独自の経済心理学を研究し、日本で初めてマーケティングに応用。過 去 にプロデュースしたプロ ジェクトの 数 々は、大 前 研 一氏の「ビジネスブレイクスルー」、「ワールドビジネスサテライト」はじめ、「めざまし T V」「金スマ」など、各種メディアで特集されている。主著『5 秒で語ると夢は叶う』サンマーク出版、『生きテク』PHP 研究所 など。