- 公開:2022/03/07
- 更新:2023/12/21
カレーかカツ丼か、それとも
カツカレーか。
〜日本人を作ってきた「どっちも良い」という文化〜
「今日の夜ご飯はカレーかカツ丼、どっちが良い?」と聞かれたらあなたはどのように答えるだろうか。カツ丼、カレーという答えの他に、”カツカレー”という発想が出てきた人もいるかもしれない。このような「どっちも良いから、混ぜちゃおう!」という発想は、日本独自のものだ。事実、カレーはインドで生まれたが、カツカレーは日本で生まれている。他にも、「オムライス」「天津飯」「ドリア」などは日本で生まれている。オムライスはフランス発祥のオムレツに、天津丼は中国発祥の蟹肉入りの玉子焼きに、ドリアはフランス発祥のグラタンに日本人がご飯を掛け合わせ、出来上がった。
日本人の価値観
日本人は古来より、「どっちも良いよね」「良いものは残そうね」という価値観で文化を作り上げてきた。良いものはどんどん取り入れていくという価値観である。それを象徴するのが奈良時代に生まれた「神仏習合」という考えだ。
「神仏習合」とは、本来であれば別々の宗教である「神道」と「仏教」が融合して生まれたものだ。普通であれば神道が正しいか、仏教が正しいか、選ばなくてはならないところを、「どっちも良いよね」という価値観で融合した。
このような”融合する文化”は現代の私たちにも強く受け継がれている。例えば、日本人は12月にはクリスマス(キリスト教)、大晦日の夜には除夜の鐘(仏教)、お正月には初詣(神道)、結婚式を教会で挙げ(キリスト教)、葬式はお寺に依頼(仏教)する。
他の国から見れば異様な文化だと思われるかもしれないが、日本人は「どっちも良いよね」「良いものは残そうね」という価値観を持っているので、何も違和感を感じない。
こちらは秩父神社にある神輿だ。一見、普通の神輿に見えるかもしれないが、よくよく見るとこの神輿の台座には葵の紋、屋根には菊の紋があるのが分かる。葵は徳川家の家紋で、菊は天皇家の紋。つまり、1つの神輿に徳川家の家紋も天皇家の紋も両方入っている。
こうした共存は、他の国では絶対にありえない。他にも、東京の街を歩いていると「徳川家ゆかりの寺」を見つけることができるが、これも他の国ではありえないことだ。他の国であれば大政奉還で徳川家の時代が終わり、天皇家の時代になったタイミングで、寺や書物など、徳川家に関係するものは全て壊されてしまうだろう。
例えば、中国は前の皇帝の時代が終わったらその皇帝に関連するものは全て滅ぼすことが当たり前であった。焚書(ふんしょ)と言って、前の皇帝に関連する全ての書物を焼きはらってしまう。また、前の皇帝の家族、仕えていた人、携わっていた人たちを殺すのはもちろん、前の皇帝の趣味に関連する職業の人までも殺されていた。前の皇帝が雅楽を愛していたのであれば雅楽に携わっていた人が次々と殺されていたのだ。だから雅楽は中国では滅び、日本でしか聴くことができない。
このような他国の例を見ると、前の時代のトップである徳川家と次の時代のトップである天皇家が同じ神輿に並んでいることは、世界的に見ればかなり特殊な光景なのだ。普通であれば、白か黒かハッキリとさせなければならない。しかし、日本人は「曖昧なままでもOK」「ハッキリさせる必要ないじゃん」とグレーのままにしておくことができる。
AかBかどちらかを採用するのではなく、AもBも良いとこは採用するのが私たち日本人らしい価値観なのだ。
「〇〇すべき」という思考に違和感を覚える日本人
会社の上司や学校の先生、親に「〇〇すべき」「〇〇しないといけない」と言われた経験があるだろうか。このような「〇〇すべき」という言葉に違和感を覚える人も多いはずだ。しかし、それは当たり前のことで、なぜなら「〇〇すべき」「〇〇しないといけない」というように、YES or NOをハッキリさせる思考は、欧米的な発想からだ。
私は、高校生の時にディベートを学び、YESとNOをはっきり言えるようになり、相手の悪いところを指摘できるようになった。その結果、友達がゼロになった。
最近、欧米のセレブ達の中で、「アサーティブ」や「アサーション」と呼ばれるコミュニケーション技術が浸透してきている。例えば、密室でタバコを吸っている人に、「あなたは、吸うのをやめるべきだ!」と言うのではなく、「ちょっと窓を開けて良いですか?」と表現することで、相手に間接的に伝える技術である。日本人からすると、当たり前のように感じる伝え方であるが、このような伝え方が、世界最先端のコミュニケーション技術として注目を集めているのである。
日本人的な思想があれば宗教問題も解決?
今もユダヤ教、キリスト教、イスラム教は聖地エルサレムを巡ってさまざまな争いを繰り広げている。しかし、日本人的な発想をすれば「宗教が3つあって良かったね!シェアしようよ」となる。決してどちらかを否定するのではなく、「どっちもいいじゃん。こっちもいいし、こっちもいい。」という考えが我々日本人の本来の姿なのだ。
このような考えを世界中の人たちが持つことができれば、世界から多くの戦争が無くなっていくかもしれない。あなたも「ちょっと生きづらいな…」「なんか苦しいな…」と思った時は「どっちもいいじゃん。こっちもいいし、こっちもいい。」という視点で世界を見てみると少し楽になるかもしれない。
この記事を書いた人
DEEP Branding japan 編集長
オキタ・リュウイチ
DEEP Branding japan 編集長
オキタ・リュウイチ
早稲田大学人間科学科中退。行動経済学に類した独自の経済心理学を研究し、日本で初めてマーケティングに応用。過 去 にプロデュースしたプロ ジェクトの 数 々は、大 前 研 一氏の「ビジネスブレイクスルー」、「ワールドビジネスサテライト」はじめ、「めざまし T V」「金スマ」など、各種メディアで特集されている。主著『5 秒で語ると夢は叶う』サンマーク出版、『生きテク』PHP 研究所 など。
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