• 公開:2022/03/07
  • 更新:2023/11/27

コロナパニックにおける食糧
買占め騒動はなぜ起こったのか?

新型コロナウイルス感染症が拡大して間もない当時、デマの情報が拡散されてトイレットペーパーの買占め騒動が勃発した。週末の外出自粛が促され、百貨店や飲食店での臨時休業が相次いだ。ロックダウンも時間の問題と囁かれ、日本中が不穏な空気に包まれた。

国をも揺るがす天災を迎えたときに、海外では”暴動”は起きても”買いだめ”は起こらない。日本人だけがなぜ、行列したり買い占めたりするのだろう。そこにはどのような心理が眠っているのだろうか。

それを探るためのヒントが、江戸時代の大飢饉に隠されていた。

江戸の大飢饉パニック!次々と死亡者が続出…

不安に煽られ混乱した人たちが近所のスーパーに押しかけて、買い溜めしてしまう行動心理には「江戸時代の大飢饉」が深く関わっている。

国民の80%は農民だった江戸時代だが、食糧が入手できなかった家は、餓えによる栄養失調で次々と命を落とした。こうした悲惨きわまりない餓死の原因はもちろん自然災害ではあるが、幕府や藩の政策にも問題があった。

当時、飢饉におそわれた藩があっても、周囲の藩がそれを援助することはなく、多くは自藩の食糧を守るため、物質の流出を防ぐ措置をとっていた。また、普段から食糧を備蓄する余裕がなかったことも要因として挙げられる。

日本人が経験した、壮絶なトラウマ体験

さらには疫病も流行、天明の飢饉では全国で90万人以上が死亡したといわれている。そのため避難民が農村から江戸へ流れ込み治安が悪化し、江戸や大坂では米屋・商家の打ち壊しが起こり、騒動は全国に広がりをみせた。このような壮絶なトラウマが日本人の中にDNAとして残っているのである。

私たちは、決して飢饉を経験したわけではない。しかし、日本人は、経験したことのない危機が迫ると、不安をいち早く察知し、我こそはと近所のスーパーやコンビニへ駆け込み、必要以上に買い溜めることで安心を得ている。

不安や恐怖の行動心理、傾向と対策

不安や恐怖に直面した時、長く蓄積された日本の歴史を紐解いていけば、必ず日本人の行動パターンに行き着く。今回は、負の行動パターンを紹介した。一方で、東日本大震災の時に我々が目にした「食料配給に並ぶ姿」に代表されるように、素晴らしい行動パターンもあるだろう。先人達の経験を無駄にせず、歴史に学ぶことで、今目の前の困難を乗り越えることができるかもしれない。これこそが、「deep branding」の真髄である。

この記事を書いた人

オキタ・リュウイチ

DEEP Branding japan 編集長

オキタ・リュウイチ

DEEP Branding japan 編集長

オキタ・リュウイチ

早稲田大学人間科学科中退。行動経済学に類した独自の経済心理学を研究し、日本で初めてマーケティングに応用。過 去 にプロデュースしたプロ ジェクトの 数 々は、大 前 研 一氏の「ビジネスブレイクスルー」、「ワールドビジネスサテライト」はじめ、「めざまし T V」「金スマ」など、各種メディアで特集されている。主著『5 秒で語ると夢は叶う』サンマーク出版、『生きテク』PHP 研究所 など。